分けて考えるメリット・効果とは?仕事のプロセスを分けて考えてみよう

仕事を分けて分解・分類して取り組むイメージ

皆さんは、毎日やっているご自身の業務をプロセスに分けられるでしょうか?

 

いちいちそんな事をする必要があるのか?と思われている方もいらっしゃると思いますし、分けようとすると、意外と分けられない方もいらっしゃるようです。

 

自分の仕事を分けて(分割・分解)考えてみるというのは、一見無駄に見えるのですが、実は仕事全体を俯瞰することになり、仕事の引き継ぎ、定型化、見直しや改善に非常に効果的なのです。

 

今回は、私が経験した事例を使いながら、そのメリット・効果と、分ける(分割・分解)ヒント、分割思考(考え方)のコツをお伝えしたいと思います。

 

 

 


自分の業務をプロセスに分ける

仕事における分解力のイメージ

 

 ある社員数90名程度の中規模コールセンター受託会社の業務改善コンサルティングをしていた頃、社長から「営業課長(Aさん)が別部門へ異動するので、若手(B主任)に業務の引き継ぎをしたいのだけれども、ちゃんと引き継ぎができるか不安だ」という相談を頂きました。

 

私は早速A課長と面談し、進め方のヒアリングを実施しました。すると、どうも引き継ぎを口頭で行っているというのです。そこで私は、定型業務で良いので引き継ぎ書を作成するように依頼しました。その際に、目的とプロセスに分けて出来るだけ分かりやすいものを作成するようお願いしました。

 

さて、程なくして引き継ぎ書を作成したA課長がBさんに、引き継ぎ書を使いながら業務の引き継ぎを始めました。そこで私はB主任に、不安なところは無いかヒアリングを実施しました。すると「なんとなく分かるのですが少し不安です」と言うのです。私は一体どのような引き継ぎを行なっているのか不安になり、A課長の引き継ぎ資料を確認してみました。

 

A課長の引き継ぎ項目の一つを簡単に紹介すると、下記のようなものでした。(実際は、下記のような内容が十数項目並んでいました。)

 

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項目1: 得意先α社定例ミーティング

 

目的: 得意先である金融サービス会社α社部長と当社社長含むトップ会議で、受託しているコールセンター業務のサービス品質、

来期体制、費用などの重要事項を合意する。

 

プロセス: 半期ごとに先方の担当者と重要協議内容を決め、トップ面談日を設定して会議を行う。

 

α社担当者:C様

 

開催時期:8月、2月

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私はこの引き継ぎ書をみて、社長が私に相談された真意が理解できました。

 

プロセスに分ける(分割・分解する)ということ

 

営業のような個人スキルに依存する業務では、ほとんどのノウハウは共有されにくいものです。ですが、定型的な業務もあり、ノウハウは紙に残すことができます(参考資料としての受注事例のプロセス化なども可能です)。

 

しかし、せっかく作ってくれた引き継ぎ資料でも上記のようなレベルのものでは、誰が、いつ、何を、どのように進めるのかが非常に曖昧です。何から始めるのかが曖昧で、仕事を進めてもその進捗も分かりません。完全にA課長の中で暗黙知となっており、引き継ぎ書は生かされず、結局Bさんは我流で経験しながら仕事を進めることになるでしょう。

 

結果的に、今までのプロセスに慣れたD社との間でトラブルになるかもしれません。

そこで私は、「最初は具体的に何をしましたか?」「それはいつですか?」「誰が誰に行うのですか?」「場所はどこですか?」「どのように進めましたか?」と質問をして、彼の前でプロセスを書き上げてみました。

 

(書き上げたプロセス)

目的: 得意先α社部長と当社社長含むトップ会議で、受託しているコールセンター業務のサービス品質、来期

体制、費用などの重要事項を合意する。

 

そして、Bさんを呼び出して、A課長にこのプロセスを使って引き継ぎ説明をするようにお願いしました。

 

終わった後でBさんに感想を聞いてみたところ、非常に明快に「何をすれば良いかが、すごく良くイメージできました。どの程度の作業量かもイメージできます。この形だと助かります。」と言われました。

 

そこでA課長は、私が作ったこのフォーマットを使って残りの引き継ぎ項目も書き上げてくれ、Bさんへの引き継ぎを再度行ってくれました。結果、Bさんの理解度は格段に上がり、非常に早く課長として立ち上がってくれることになりました。

 

それどころか2年ほど経つと、Aさんが作った引き継ぎ書がマニュアルレベルに定型化され、業容が拡大した当社での営業教育に大いに役立ちました。更には、営業員全員でマニュアルのプロセスに改善を加えるまでになったのです。(上記例でいうと、議案作成は、顧客要望を先に聞いて議案に落とし込む形に変更されました。結果、顧客意見の検討時間が増え、効率的にデータ準備や回答準備を行え、顧客の信頼UPにつながりました。)

 

プロセスに分ける(分割・分解する)効果

仕事を分けて分解・分類して取り組むイメージ

今回は引き継ぎ事例でしたが、一般に業務をプロセスに分ける(分割・分解)効果にはどういったものがあるでしょうか?

 

① やるべき行動が明確になる。作業量が見通せる

具体的な行動を細かく分けて書いているので、何をすれば良いかが明快です。また、全体が俯瞰でき、ある程度業務量が見通せるので、計画的に準備が進められます。

 

② 順番やリードタイムがわかるので、進捗管理がしやすい

時系列に分けられているので、今の自分の立ち位置が分かりやすく、進捗スピードの調整が容易になります。また作業が遅れているのも分かります。

 

③ プロセスの見直し(省略、統合、プロセス再編、単純化)ができる

暗黙知であった業務プロセス全体を俯瞰できる形に見える化できるので、チームでの教育、意思共有や業務品質アップのためのプロセス改善につなげることができます。

 

プロセスに分ける(分割・分解する)コツ

さて、今回の場合は、私がプロセスに分ける作業をしてフォーマットを作るお手伝いをしましたが、プロセス、フォーマットを導き出した思考の流れをお伝えしたいと思います。

 

私は、まず自分が読んで動けるレベルの行動単位にA課長の行動を分解しました。行動できないと思ったら、さらに細かくヒアリングして、小項目に落としました。人が動ける単位に構成要素を分け直したらイメージしやすいと思ったからです。そして、その行動が、誰がみてもイメージできるように、補足情報を加えました。

 

その結果、もうお気づきだと思いますが、報告書で利用する5W1Hのフレームワークを用いて情報を追記していたのです。(良く見ていただけると、いつ(When)、目的(What)、誰が(Who)、場所/手段(Where)、使用するもの/こと(Which)、どのように(How)、に分かれているのにお気づきいただけるのではないでしょうか。)

 

さらに、モレを防ぐために注意事項も記載しました。これで、A課長の頭の中に入っている暗黙知は、かなりの割合で書き出せたのではいないかと思っています。

 

このコラムをお読みの皆さんからは、「それでは最初からフレームワークを使えば良かったのではないか」と言われそうですね。けれど、A課長もベテランで当然5W1Hのフレームワークは知っていました。でもプロセスには分けられなかったのです。なぜでしょうか?

 

ここではっきりさせておきたいのは、私がやりたかったのはフレームワークを使うことではなく、行動を理解しやすいように分けたかったのです。その目的のために、便利な5W1Hを使って表現したと言うだけなのです。

 

思考を分ける訓練をしている人は、まずどういう単位に分けるべきか、その構成要素を考え、結果的に目的に応じたフレームワークがあれば、それを使います。フレームワークを使うのは、その方がモレやダブリが少ないのを知っているからです。一方で、フレームワークでも足りないと感じた場合は、今回の「注意事項」のような追加項目を入れてモレを防ぎます。

日頃の仕事をプロセスに分ける(分割・分解する)

今回は、分割思考の1つ、プロセスに分ける効果と分けるヒントについて、触れてみました。

 

意外と慣れて暗黙知化している日頃の仕事でも、分けると発見があります。引き継ぎに限らず、業務を改善していきたいなどと漫然と思われている方は、ご自身の定型業務から分けてみるのも良いでしょう。業務マニュアルの作成をしてみるのも効果的です。分ける時には、分かりやすい構成要素は何かを考えるのが分けるコツです。

 

「分かる」は「分ける」とも言いますが、まさにぼやっとしていたものが、分かるようになります。また、分けることで全体のつながりが俯瞰でき、改善点が見えてきます。ですので、実はこの作業はプロのコンサルタントもやっている仕事術なのです。

  

「仕事ができない」という場面をいくつか挙げるとすれば、「同じミスを何度も繰り返す人」「業務を終えるまでの時間が長すぎる」「スケジュール管理ができない」ということがあります。

 

仕事を進めるにあたって、プロセスを「分ける」ということを意識することを是非お薦めします。

 

 

 

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